シラノ・ド・ベルジュラック

作品データ

・原題:Cyrano de Bergerac

・製作年:1990年

・製作国:フランス/ハンガリー

・上映時間:139分

・監督:ジャン=ポール・ラプノー

・原作戯曲:エドモン・ロスタン

・脚本:ジャン=クロード・カリエール、ジャン=ポール・ラプノー

・出演:ジェラール・ドパルデュー、アンヌ・ブロシェ、ヴァンサン・ペレーズ、ジャック・ウェベール、ロラン・ベルタン、フィリップ・モリエ=ジュヌー ほか

・音楽:ジャン=クロード・プティ

・撮影:ピエール・ロム 

あらすじ

17世紀のフランス。剣の達人で詩人でもあるシラノは、美しい従姉妹ロクサーヌに恋をしていた。しかし、自分の大きな鼻を気にして、想いを伝えられずにいる。

そんなある日、ロクサーヌが若く美しい青年クリスチャンに恋をしていることを知る。シラノは、恋する二人のために、自分の言葉と詩をクリスチャンに託すのだった。

果たしてシラノの秘めた恋の行方は――。

未鑑賞の方へ

この記事には、作品についての感想や、物語の展開・結末に触れています。

「まだ観てないけど、内容は知りたくない!」という方は、

ぜひ先に映画を楽しんでくださいね。

ここから本編

シラノ・ド・ベルジュラックの時代背景は17世紀前半/1640年代。アレクサンドル・デュマの「三銃士」、フランス宮廷文化が華やいでいたのと同時代にあたります。

シェイクスピア作品が、その半世紀前/16世紀末〜17世紀初頭。レ・ミゼラブルはその約200年後/19世紀。

激動の時代背景の中で、たくさんの『名作』が生まれています。現代に生きる私たちはこの貴重な財産を、エンターテイメントとして鑑賞できることは、実に感謝感激であります。

このような古典や時代劇はストーリーもさることながら、生活様式や、衣装、食べ物や、えげつないほどの格差社会の中での、人々の価値観など、とにかく見どころがいっぱいです。

私は20代の時、渋谷Bunkamuraまで駆けつけ、鑑賞に行きました!う〜ん、若かった(笑)そりゃあ、大好きなジェラール・ドパルデューですしね!

後にも先にも、映像で残る最高峰の作品です。カンヌ、セザール、アカデミー賞など、数々のノミネートと受賞あり。やはり、衣装、デザイン、美術などはかなり強かったですね。

そして何と言っても、シラノを演じた圧巻のジェラール・ドパルデューですよ。

1998年〜2000年頃にTV版での「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャンも、彼が演じていたのですが、総じてこの無骨な大男。実に、実に、ありえなほど心の繊細な演技をされるのですよ。ぜひ、機会があったらご覧いただきたい!

当時の詩人の立ち位置とすれば、パトロンの庇護のもと権力者やサロンでの知的好奇心を満たす役割。

それらにシラノは断固拒否する誇り高い男であった。自分の詩的な才能を、出世や名誉のためでなく、愛するロクサーヌのために捧げた。もはや、もはやの切ないラブストーリーではあるのだが。

世の中には、口の達者な人、口下手な人、様々な人間がいますが。人の心を動かすのはきっとテクニックではない。シラノの持つコンプレックスからくる、深い内観。

深い、深い内観から生まれる、彼の本質が愛する人への美しい詩となり、人々を鼓舞することも、または落ち着き鎮めることもできるのだ。

これは現代でも通じると思う。『言葉には刃にも薬にもなる』とはよく言ったもので、適切に使えば人の心を癒し、励まし、関係を良くする力となり、また時として使い方を間違えると、実際の刃物より鋭く人を傷つける。

そして言葉による心の傷は治療が難しいから、適切に取り扱わないといけない。そのためには、シラノのように内観し続けることで本来の美しさが、本当に見て欲しい人には、しっかりと伝わるのだろう。

文明はそれでも日々進化し続けている。たかだか半世紀生きていただけで大きく変わっているんだから、大変よ。そしていつも側にあるのは愛する人というより、スマホだったりして(笑)

情報の氾濫、取捨選択、情報漏洩、損得勘定…そうして人は自身を見失う。そしてそれに気がつくことも出来ない。それでも生きていくことは出来るが『本当の自分の言葉』は、そうそう簡単には生まれないのだ。

本当に欲しいものは選ぶ、他は捨てる。モノもコトも同じ、ではないけどあまり違わないのかも知れない。自戒を込めて内観しようではないか。

そして、シラノの切ないほどに健気な行動力だ。そこにはロクサーヌちゃんが「悲しまない」事が大前提であるから。本来自分じゃなくてもいいわけなのに…….。

それにしても。言葉の持つ力が現代とは次元が違うのも、非常に興味深いのも見どころです。「容姿の美しさ+愛の手紙(言葉)」だけで、決定的な愛の決定事項になるんですから。

切なく一途な「片思い・自己犠牲のラブストーリー」がこの物語の核ではありますが、冒険アクション要素もあり、そして誇り高く生きる男の美学や騎士道精神、孤独や葛藤を描いた文学的で情熱的な、ヒューマンドラマに仕上がっています。tottyはこの、『男の美学』がなにより大好きなんです♡

そしてあの美男子、クリスチャンについても少し語りたい。なかなかのハンサムだが「接吻」「接吻」としっかりおいしいところを持っていくスタイルで生きてきた。

今まで黙っていれば、簡単にモテててしまうがゆえに、中身の空っぽさが、シラノの高貴な知性と人間性に反射され、自身に打ち出されてしまう葛藤をうまく表現している。ヴァンサン・ペレーズ、なかなかのハンサムですよね(笑)

ギーシュ伯爵も同じ。(人を蹴落としてでも)階級が上がる事に葛藤を感じる、と言っている。そう、人は本物を見てしまうと『怖く』なるのですね。

しかし今も昔も、美男美女というのはやっぱり有利なのだな、と思わずにはいられない(笑)だから多かれ少なかれ、コンプレックスを持つ我々は、静かに心を整えて…

逃げ場はきっと自分の体と心にある。体は鍛え、休ませ、心は耕し、広げる。そうすれば、逃げ方も多彩になる。あるいは良い友。

コンプレックスというものは、あればあるほど、それぞれの適切な時期に光り始めるのかもね。ただ、それがいつなのか分からないものだから…

『本当に欲しいもの』に出会ったら、1回はアタックした方がいいって。そう思ったんだ。人生は思ってるより案外短いから。失うものはちっぽけなプライドぐらいじゃないか。ねぇ?そこの、しらの君!

最後に劇中に登場する象徴的なお菓子である「タルトレット・アマンディーヌ」。待ち合わせがお菓子屋というのも面白いですが(笑)フランスの伝統的な焼き菓子です。今でも作っているお店はあるのでしょうか?どんなに時代が移り変わっても、伝統的なものは現代にも結構受け継がれていますから、どこかの洋菓子店で出会えるかもしれませんね!めっちゃ、食べたい!

あ〜!やっぱり古典てホントに最高ですね!毎度、好き放題に綴っておりますが、楽しんでいただけたら幸いです!若い方たちにもぜひ観ていただきたい作品ですよー!

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