八甲田山

作品データ

作品名: 八甲田山

公開年: 1977年
公開日: 1977年6月4日
製作国: 日本
上映時間: 169分

監督: 森谷司郎
原作: 新田次郎『八甲田山死の彷徨』
脚本: 橋本忍
音楽: 芥川也寸志
製作: 橋本プロダクション・東宝映画・シナノ企画
配給: 東宝

あらすじ

1902年、厳冬の青森県・八甲田山。日露戦争を目前に控えた日本陸軍は、雪中行軍の訓練を実施することになる。

青森歩兵第五連隊と弘前歩兵第三十一連隊。それぞれ異なる指揮官のもと、厳しい雪山へと踏み出した兵士たちを待ち受けていたのは、想像を絶する寒さと吹雪だった。

自然の猛威、指揮系統の混乱、そして人間同士の判断の違い。極限状態に追い込まれた兵士たちの姿を通して、自然の恐ろしさと人間の生きざまを描いた作品。

未鑑賞の方へ

この記事には、作品についての感想や、物語の展開・結末に触れています。

「まだ観てないけど、内容は知りたくない!」という方は、

ぜひ先に映画を楽しんでくださいね。

ここから本編

いやはや、古い映画ですね。ざっと50年前。可愛いもんですよ、カラーなんですから(笑)

我が愛する健さんの、70年代の代表作の一つです。見どころは多々ありますが、とりあえず伝えておきます。【怖いよ〜〜!そこいらのホラー映画より怖ぇ〜から!】と(笑)

この「八甲田山」は遭難事件としては実話。ストーリーやキャラクター設定は小説ということを踏まえて鑑賞するも。もはや、もはや、ですよ。

まずこの映画のリアルは、何と言っても『撮影監督:木村大作』大先生です。ここはもう別枠で語るしかない。北国の大自然、雪ひとつ取っても「優しく包み込むような雪」や、今回のような「厳粛かつ無情で、あまりにも冷徹冷酷な雪」など。

様々な自然の表情を、一切のCGなし、本物の自然を愚直に撮影するスタイルで有名です。「その瞬間を待つ」八甲田山においては、ご苦労は計り知れない作品となりました。作品全体のこのリアルさ、怖さは『本物』だから。画面越しでも感じてしまう極限の寒さのです。今となっては大変貴重な作品だと思います。

自ら監督、撮影された『劔岳 点の記』(2009年)もオススメなので、ぜひご覧ください!

さてさて、物語は「雪中行軍」であるとともに、将来起こりうるかも知れない対ロシアとの戦争に備えた「軍事訓練・調査」の中で当時の日本の、そして軍の価値観や、恐怖の縦社会!!を見せつけられる事になります。

『それは、あまりにも愚策すぎます〜!あなたが行けばいい〜』などと、うっかり発言したら、tottyはたちまち非国民として囚われてしまうことでしょう。

1902年の出来事です。たかだか120数年前の、日本の価値観なのです。明治憲法では天皇が陸海空を統帥していたので、それに仕える存在として軍人は社会的にも高い地位と名誉を持っていた時代。

明確なる縦社会。将校は指揮官として教育を受けたエリート。兵士は一般家庭や農家などから徴兵された人々。様々な国の戦争映画でも描かれていますが、その中でも日本はかなり特殊ですよね。

さて、健さん率いる【弘前歩兵第31連隊(徳島大尉の部隊)】全員に目が行き届きやすく、統制の取りやすい少数精鋭で構成された部隊。出発の前準備からの入念な計画と、情報収集。

なにより彼の視点の深さと鋭さだ。状況を冷静に見極め、決して逃避せず、現実を注視する。時には冷酷に感じる判断も、その後に派生する困難をすべて見極めたものだ。軍人であることと、その中の理不尽さを認識しながらも「自分の決断、判断」が部隊の命運を握っていることを理解している。

そしてこの不器用で無骨な漢はいつだって、他者への尊厳に対する心を忘れない。だから人は彼に惹かれるのだ。

そんな事は本当は、時代も立場や役職なんかも関係ないはずなんだけど。私の「理想の上司」像だったが、しかし現実では見事に会ったことなかったねぇ〜!(笑)清々しいくらいに!

お次は寿司屋のイメージが取れない北大路欣也率いる【青森歩兵第5連隊(神田大尉の部隊)】彼が指揮権を取るべく、めっちゃ情報収集して計画していたのに!頑張ってたのにっ!やるせなかったですね。

本来指揮権をもつはずの人間が、現場でその権限を奪われて崩壊していく。このプロセスこそが、映画「八甲田山」における物語の中核となっているテーマである。

210名にも及ぶ大所帯で、大名行列の如くに。実に滑稽です。地元ガイドの忠告も突っぱね、指揮権が曖昧なまま、混乱して大遭難へとつながる。歯がないじっちゃん、ちゃんと警告してたからね!

現場の指揮官に責任と権利を集中させていれば、防げていたかもしれない惨事だっただけに、中間管理職の悲哀というか…..いやはやです。

現代の社会構造や、組織などにも往々にして出現しているしね。今、特にたちが悪いと感じる現像は『責任』の扱い方だとしみじみ思う。

31連隊の徳島大尉のように、上層部からの干渉を徹底的に排除し、自らが絶対的な指揮権(責任)を引き受ける強さ。カッコいいよ、本当に。

そしてこの映画には往年の昭和の名優が、こぞって出演しているもの見どころですね!案内人の村娘「さわちゃん」を演じた秋吉久美子。もぅ、完全に雪ん子の精ですよ!可愛すぎます。過酷な雪山を導いてくれた事への深い敬意を表した「案内人に敬礼!」は胸熱シーンです。

ちなみに私はこの頃の緒形拳が、何よりのごちそうです(笑)ごはんが止まりません。「陽暉楼」や「楢山節考」あたりのえげつないやつ、また観たくなります。

さて、我々の恐怖を煽ったのは、やはり大自然の脅威。実際の撮影も当然八甲田山。大型扇風機やCGも使用せず、実際の吹雪の中で撮影しています。

気温マイナス10〜15℃

風速最大15m/s

体感温度約マイナス30℃

今でこそ、用途に合った防寒具を準備することで備えることが出来るかもしれないが。少数精鋭の第31連隊は、頭から脚まで入念な準備のもと統一されていたとの事。

そしてデータによると第5連隊の方は、将校と兵卒にも軍服や外套にも差があったようです。兵卒は木綿の軍服だったそうですよ!

かけるべき所にお金を使わない。tottyが最も嫌悪する組織の嫌なところです。百歩譲って、「みんなが同じ条件」ならまだマシですが。命がけのことなら尚更です。

このように、極限の環境に挑むことには、傲慢さからくる『無知』は命取りです。無知ゆえの無敵感とでも言えましょうか。

この作品でも描かれているように、極寒の雪山特有の恐ろしいメカニズムも散りばめられています。

持ってきたお弁当はカチンコチンに凍る世界です。人間も凍るのです。通常の人間の体温は36℃前後です。まず手指、足先からダメージを受けます。寒さでかじかんで、動かしにくくなる、その先の症状です。

体温が30〜28℃以下まで下がると、脳への血流や酸素供給が滞ることで、認知機能の低下や幻覚が出現します。脳が麻痺状態になることで、感覚も麻痺します。これが「異常寒冷錯乱」による『矛盾脱衣です』。

凍死直前になると、体内の血流コントロールが崩壊するため、脳を守るために中心部に集めていた血液が一気に全身の毛細血管へ逆流し、身体の表面が一瞬だけ熱くなったような錯覚に襲われるため、服を脱ぎ捨ててしまいます。うん、書いてて怖い。

また、わずかな「保有熱」である尿を、体外に放出すること自体が、すでに低体温症のギリギリで保たれていた熱平衡が崩れ、虚脱状態へ陥ります。また、尿が衣服に付着した瞬間に、マイナス数十℃の外気で一気に凍りつきます。

湿った布地は恐るべし速さで体温を奪うため、そのまま凍死へ向かいます。また、衣服を緩めることで、吹き荒れる猛吹雪がそのまま肌や隙間に侵入します。極限状態で緊張を維持してきたことで、副交感神経が働き血圧が一気に下がります。

このように今の私達は、医学的に理解することができますが、この作品ではもろに直感的に恐怖を表現しているところがトラウマ級です。

うっかり10歳そこそこで初鑑賞してしまったtottyは、恐ろしさのあまり入眠困難になった夜を覚えています。

昭和の緩い時代に家族で「水曜ロードショー」で観たと思います。いや〜、家族がいたところでさ〜(怖)当時は一般映画の扱いなんですよね。今の規定なら少なくとも【R15+】に該当する可能性は十分にありますね。

とにもかくにも、この史実に基づく出来事と、迫力の映像、超豪華な俳優陣!古さなんて感じない!後世に残る名作の一つです!ぜひご覧ください!

「いやぁ〜♡映画って本当にいいもんですね〜!」

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